相続したという理由だけで、すべての土地を直ちに測量するわけではありません。 相続登記の相談と、売却・分筆などに向けた測量の相談を分けると、必要な作業を選びやすくなります。
電話では「実家を相続しました。今後は○○を考えていますが、測量や建物の登記が必要か分かりません」とお伝えください。分からない項目は、そのままで構いません。
相続した実家について家族で話し始めると、「土地は先に測っておいた方がいいのでは」という話が出ることがあります。
一方で、測量には目的や範囲があり、土地の状況、手元の資料、売却や建て替えの予定によって、確認する順番も変わります。相続したから一律にすぐ測量が必要とも、当面は何もしなくてよいとも言い切れません。
大切なのは、測量をするかどうかを最初に決めることではなく、家族が次に何を判断したいのかを言葉にすることです。
この記事では、盛岡・岩手で実家を相続した方が、費用のかかる手続きへ進む前に整理しておきたい「目的・期限・資料」を、土地家屋調査士の第三者目線で分けます。
まず、「相続の手続き」と「土地の現況確認」を分ける
相続に関係する話には、名義、税、遺産分割、建物の利用、土地の境界など、異なる分野が一度に登場します。家族の会話が難しくなりやすいのは、これらを一つの問題として扱ってしまうからです。
たとえば、土地や建物の権利の名義に関する手続きは、法務局や司法書士へ確認する内容が中心になります。相続税や譲渡に関する税務判断は、税務署や税理士への確認が必要です。不動産の売却条件や価格は、不動産会社へ確認する領域です。
土地家屋調査士が主に確認するのは、土地の位置・形状・境界や、建物の物理的な現況と登記との関係です。
どの専門家に何を聞くかを分けるだけでも、「何から相談すればよいかわからない」という状態から一歩進めます。相続登記には申請義務があります。原則として、自己のために相続があったことと、その不動産の所有権を取得したことを知った日から3年以内の申請が必要です。2024年4月1日より前から取得を知っていた未登記の相続も対象で、原則2027年3月31日が期限です。遺産分割が成立した場合の追加の義務もあるため、測量の方針が未定でも、相続登記の期限は司法書士や法務局へ先に確認してください。法務省の相続登記義務化の案内
1.測量の前に「何のために確認したいか」を書く
同じ実家の土地でも、目的が違えば確認したい範囲が変わります。
- 売却を検討するため、買主や不動産会社から求められる条件を把握したい
- 建て替えを検討するため、住宅会社や建築士が敷地について何を必要とするか確認したい
- 兄弟姉妹で土地の扱いを話すため、現在わかっている事実を共有したい
- 塀や境界標が気になり、将来の管理に備えて記録を整理したい
- 解体を考えており、工事前に隣地との関係や建物登記を確認したい
この段階では、家族だけで「測量をする」と決めなくても構いません。「売却の可否を決めたい」「建て替え案を比較したい」「現状だけ把握したい」のように、次の判断を書き出します。
売却予定があるなら、不動産会社へ「取引条件として、どの資料やどの程度の境界確認を想定しているか」を確認します。建て替え予定があるなら、住宅会社や建築士へ「計画のどの段階で、どの精度の敷地資料が必要か」を確認します。その回答を持って土地家屋調査士へ相談すると、目的と調査範囲をすり合わせやすくなります。
2.「いつまでに何を判断するか」を家族でそろえる
家族の一人は早く売りたいと思い、別の人は数年残したいと思っていることがあります。この状態で先に調査や手続きを発注すると、後から「そこまでは頼むつもりがなかった」という行き違いが起こるかもしれません。
次の三つを、わかる範囲で一枚にまとめてみてください。
- 次に決めたいこと:保有、売却、解体、建て替えなど
- 目安の時期:すぐ、半年以内、来年以降、まだ未定など
- 決定に関わる人:相続人、居住者、管理している家族など(連絡窓口と、法的に手続きを行う人は別に確認します)
意見が一致していない場合は、「未定」「意見が分かれている」と記録すること自体が判断材料になります。土地家屋調査士が家族に代わって売却や測量の実施を決めることはありません。第三者として、現在わかる事実、まだ確認が必要な点、各専門家へ聞く内容を分けます。
3.手元の資料は「新しい・古い」ではなく、出所と日付で分ける
実家から古い測量図や契約書が見つかることがあります。古い資料も経緯を知る手がかりになりますが、その一枚だけで現在の境界や面積を確定できるとは限りません。
まずは、次の資料があるかを確認します。
- 固定資産税の納税通知書や課税明細書
- 登記事項証明書、公図、地積測量図など
- 過去の売買契約書、境界確認に関する書類、測量図
- 建築確認に関係する図面や建物の平面図
- 境界標、塀、建物、物置などが写った現地写真
- 隣地とのやり取りを記したメモや家族が覚えている経緯
資料には「書類名」「作成者または取得先」「日付」「何のために作られたか」を付けます。わからない項目は空欄で構いません。固定資産税の資料、登記情報、過去の測量資料、現地の見え方には、それぞれ別の目的があります。面積や位置の数字が違って見えても、すぐにどれかが誤りだと決めつけないことが大切です。
戸籍、遺産分割に関する資料、本人確認書類など、個人情報を多く含むものは、相談先と必要性を確認してから安全な方法で共有してください。最初から原本一式を送る必要があるとは限りません。
4.現地写真は「判断の証拠」ではなく「質問を具体化する材料」にする
遠方から実家を管理している場合、写真は相談の入口になります。敷地全体がわかる写真、気になる場所と周囲の位置関係がわかる写真、境界標らしきものや塀の近接写真を組み合わせると、質問を整理しやすくなります。
ただし、写真だけで境界を確定したり、測量の要否を判断したりすることはできません。草や雪で見えない箇所、写真の外側、過去の経緯、隣地所有者との確認など、現地写真だけでは把握できない情報があるからです。
撮影するときは、隣家の室内、人物、車のナンバーなどが不用意に写らないよう配慮し、私有地へ無断で入らないでください。危険な斜面、道路際、老朽化した建物の周囲では、撮影より安全を優先します。
5.測量や境界確認で「予想と違う事実」が出る可能性も共有する
測量や資料調査を進めると、家族が考えていた境界の位置や面積と異なる情報が見つかる場合があります。境界標が見つからない、資料同士が一致しない、隣地所有者への確認が必要になる、といったこともあり得ます。
その結果は、依頼者にとって都合のよい内容になるとは限りません。売却条件、建築計画、資金計画、工事範囲、費用や日程に影響する可能性もあります。
だからこそ、調査を始める前に次の点を確認します。
- 今回の目的に対して、どの調査・測量・境界確認を想定するのか
- 現時点で不足している資料は何か
- 隣地所有者など第三者の確認が想定されるか
- 予想と違う事実が出た場合、次に誰へ相談するか
- 費用、期間、成果物、追加対応になる条件は何か
測量を避ければ安心という意味でも、早く測ればすべて解決するという意味でもありません。起こり得ることを先に共有し、家族の目的に合う確認方法を個別に検討するための項目です。
相談前に作る「一枚メモ」
相談前には、次の内容だけでも十分な入口になります。
所在地:わかる範囲の住所
現在の利用状況:居住中、空き家、賃貸中など
次に決めたいこと:売却、保有、解体、建て替え、未定
希望時期:わかる範囲
気になる場所:塀、境界標、増築部分、物置など
手元の資料:書類名と日付
すでに相談した先:司法書士、不動産会社、住宅会社、税理士など
家族内で未決定のこと:意見が分かれている点も含む
資料が全部そろうまで相談できないわけではありません。「ある資料」「ない資料」「まだ探していない資料」を分けるだけで、次の確認順を考えやすくなります。
まとめ:先に決めるのは測量ではなく、次の判断です
相続した実家について測量が必要か迷ったときは、次の順番で整理してみてください。
- 家族が次に何を判断したいかを書く
- 希望時期と決定に関わる人を確認する
- 資料を出所・日付・目的ごとに並べる
- 不明点を、土地家屋調査士、司法書士、不動産会社、建築士、税理士などの確認先ごとに分ける
- 測量や境界確認の目的、範囲、費用、期間、起こり得る影響を確認してから進める
倉澤土地家屋調査士事務所では、相続した土地の境界・測量・分筆、未登記や解体した建物の表示に関する登記を相談できます。売却するか残すかの意思決定はご家族で行い、その前提となる土地・建物の調査を担当します。
まだ方針が決まっていない段階でも、「何がわからないか」を分けるところから始められます。
実家の境界・建物登記を相談する
倉澤土地家屋調査士事務所は、盛岡市・滝沢市・矢巾町・紫波町を中心に対応しています。
「実家を相続しました。今後は○○を考えていますが、測量や建物の登記が必要か分かりません」
- 書類が全部そろっていなくても相談できます。
- 有料の調査・測量・登記は、内容と見積りに同意いただいてから着手します。
- 来所での受付は行っていません。訪問の場所・日時は電話で調整します。
- 図面や本人確認書類は、必要なものと送付方法をご案内してから共有してください。
参考情報
制度・窓口情報は2026年9月27日に確認しています。この記事は一般的なご案内です。個別の必要手続き・費用・期間は、資料と現地の状況を確認してご案内します。

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